最高裁判所大法廷 昭和25(あ)3475 判決
主 文
原判決及び第一審判決中被告人に関する部分を破棄する。
被告人を懲役一年に処する。
第一審における訴訟費用は被告人をして第一審相被告人Aと連帯して負
担させる。
理 由
弁護人江尻平八郎の上告趣意は、憲法違反、判例違反をいうが、実質は事実誤認
及び単なる法令違反の主張にすぎず、適法な上告理由に当らない。
弁護人池田浩一、同江尻平八郎連名の上告趣意は、原審で主張、判断を経ていな
い事項に関する単なる訴訟法違反の主張とこれを前提とする判例違反の主張であつ
て、適法な上告理由に当らない。
しかし、職権によつて調査するに、原判決是認の第一審判決は、昭和二五年法律
第一一七号による改正前の関税法八三条一項及び三項により被告人に対し没收及び
追徴を言渡しているのであるが、同法八三条一項により被告人以外の第三者所有物
を没收することは、同法その他の法令において所有者たる第三者に対しその所有物
件の没收につき、告知、弁解、防禦の機会を与えるべき旨の規定を設けていないか
ら、憲法三一条及び二八条に違反し許されないと解すべきであること並びに同法八
三条三項の追徴の規定も、右の如き理由により没收そのものが憲法上許されない場
合には、その適用の余地がないものと解するを相当とすることは、いずれも当裁判
所の判例(前者につき昭和三〇年(あ)第九九五号同三七年一一月二八日大法廷判
決、後者につき昭和二九年(あ)第五六六号同三七年一二月一二日大法廷判決)と
するところである。しかして、本件没收に係る船舶及び貨物並びに追徴の理由とな
つている没收できないとされる貨物が、被告人及び第一審相被告人A以外の第三者
の所有に属することは、記録上明らかであるから、右の物件の没收の言渡は、憲法
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の右各条に違反するものであり、また没收に代る追徴の言渡も、違法なものという
べきである。それ故、この点において、原判決及びその是認した第一審判決中被告
人に関する部分は、これを破棄しなければ著しく正義に反するものと認められる。
よつて刑訴四一〇条一項本文、四〇五条一号、四一一条一号、四一三条但書によ
り、原判決及び第一審判決中被告人に関する部分を破棄し、被告事件につき更に判
決する。
原審の是認する第一審判決の確定した事実を法律に照らすと、被告人の同判示(
一)、(二)の各所為については、関税法附則一三項により旧関税法(昭和二九年
法律第六一号による改正前の関税法をいう)七六条を適用すべきところ、同条は犯
罪後の法令により刑の変更があつたので、刑法六条、一〇条により軽い行為時法た
る昭和二五年法律第一一七号による改正前の七六条一項、刑法六〇条を適用し、所
定刑中懲役刑を選択した上、刑法四五条前段、四七条本文、一〇条により重い(一)
の罪の刑に併合罪加重を為した刑期範囲内で被告人を懲役一年に処し、訴訟費用の
負担につき刑訴一八一条一項本文、一八二条を適用し、主文のとおり判決する。
この判決は、裁判官下飯坂潤夫、同高木常七、同石坂修一、同山田作之助の反対
または少数意見があるほか、裁判官全員一致の意見によるものである。
裁判官下飯坂潤夫の反対意見は、次のとおりである。
本件上告趣意は種々論述するが、ひつきようするに、実質は事実誤認、単なる法
令違反の主張を出でないものであるか、或は原審で主張判断を経ていない事項に関
する単なる訴訟法違反の主張と、これを前提とする判例違反の主張に属するかの、
いずれかに帰するものである。したがつて、それだけで本件上告は棄却を免れない
筋合であるが、本判決はその判文の示すとおり、職権調査の上判示判決を楯とする
見解に基づき、あえて憲法判断に出で、原判決を破棄の上判示のような判断をして
いるのである。しかし、その判断の筋違いのものであることは、昭和三〇年(あ)
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第二九六一号、同三七年一一月二八日言渡大法廷判決において示したわたくしの反
対意見によつて明らかであろうと信ずるから、ここではこれを引用し論議を差控え
るが、要するに、所見によれば、本判決は無用無益な判断をしているものと考える
のである。なお、右反対意見は本事案のような第三者の所有物件が没收不能になつ
たことを理由とする追徴の場合に関しては言及していないが、その場合についても、
右意見において述べたと同じ筋道により、憲法違反云々を論議して、上告理由とす
ることは許されないものと解すべきであることは、詳述するまでもないことと考え
るので、ここではこれを省略する。
裁判官高木常七の少数意見は、次のとおりである。
わたくしは、第三者所有物の没收およびこれに代わる追徴を違憲違法とする多数
意見に賛成しえない。その理由は、昭和二九年(あ)第五六六号、同三七年一二月
一二日言渡大法廷判決におけるわたくしの少数意見と同趣旨であるから、これを引
用する。
裁判官石坂修一の反対意見は、次の通りである。
本件に関する多数意見に反対する理由は、わたくしが先に昭和二九年(あ)第五
六六号、同三七年一二月一二日言渡及び昭和三〇年(あ)第二九六一号、同三七年
一一月二八日言渡の各大法廷判決に示した反対意見につきて居るから、これ等を引
用する。
裁判官山田作之助の意見は、次のとおりである。
没收および追徴の点に関するわたくしの意見は、昭和二九年(あ)第五六六号、
同三七年一二月一二日大法廷判決におけるわたくしの意見と同趣旨であるから、こ
れを引用する。
検察官 村上朝一公判出席
昭和三七年一二月一九日
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最高裁判所大法廷
裁判長裁判官 横 田 喜 三 郎
裁判官 河 村 又 介
裁判官 入 江 俊 郎
裁判官 池 田 克
裁判官 垂 水 克 己
裁判官 河 村 大 助
裁判官 下 飯 坂 潤 夫
裁判官 奥 野 健 一
裁判官 高 木 常 七
裁判官 石 坂 修 一
裁判官 山 田 作 之 助
裁判官 五 鬼 上 堅 磐
裁判官 横 田 正 俊
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